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    第11回 2005年3月7日(月)  
         
        『多舞タカシより、愛を込めて…』 
         
[多舞タカシ]なんとこの方、ふれる〜じゅ第1回公演に出演して頂いた客演さん。 
今から、9年前の話である。 
その頃の私なんて、地元名古屋でまだランドセル背負ってたじゃない☆ 
はい、ウソつきました。すんませんm(_)m 
初演後も、多舞さんには何本も出演して頂いていて、記憶に新しい所では去年の「BLUES
TONE」だ。 
今日はそのお話。 
 
多舞さんはテレビ局のカメラマン役で、カメラ片手にテンポ良いリズムで、舞台上を明るくしてくれた。 
…舞台上では。 
 
主役は、その頃劇団員成り立てほやほやの航介。 
力強い先輩達に囲まれて、航介は自分の持ち味をいかんなく発揮していた。 
だが…、 
役者陣も随分リラックスして本番を迎えられる様になってきた舞台なか日、事件はおこった。 
次は航介と宏樹さん2人のシーン。 
航介ワープだ!! 
『説明しよう。ワープとは… 
台本上、同じ人間が上手(カミテ)にハケた瞬間すぐに下手(シモテ)から出て来なくてはいけないetc…人間には現実的に無理な行動(全くもって間に合わない)の事である。 
大抵は同じシーンに出ている役者がアドリブ等でその間をつなぐ。 
なぉウチの作・演出家は、そのあるまじき設定を、現実逃避の為[ワープ]と名付けた。 
当たり前の様に演出席から 
「そこワープして?」 
という言葉が飛んでくる。 
そんな演出ありえまい。』 
…説明が長すぎた。 
 
話を戻そう。 
そう、次は航介のワープシーンだった。 
ワープ中は、宏樹さんが弾けない設定のギターをいじっている予定だ。 
 
……じゃらんじゃら〜ん 
?? 
あれ?宏樹さんギター弾いてる? 
でもあくまでも設定は「弾けない」だ。 
だから宏樹さんは、無駄に不快音を奏で続ける。 
航介いないじゃん!?間に合わなかったの? 
やっぱり無理なワープだったかぁ〜。 
じゃらんじゃらん〜 
奏で続ける宏樹さん。航介早く〜〜(>_<) 
 
……じゃらんじゃら〜ん〜お肉〜♪ 
??? 
ん?宏樹さん歌い始めたよっ!? 
しかも歌詞「お肉〜」て。どんな歌だよ。 
航介はまだ出て来ない。 
嫌な汗が出てくる。 
ふと隣りにいた多舞さんを見ると、マジックを片手に微妙に笑っている。 
????? 
 
あ!航介出てきた! 
どぉやらお客さんは、不信に思わなかった様だ。 
ホッとした。 
何事もなくシーンは続く…何事もなく……? あれ? 
傷だらけの航介の背中に、宏樹さんが薬を塗ってあげる場面。 
いつもはない微妙な間が空いた。 
まぁお客さんは気付かないラインだ。 
だけど本当に若干、宏樹さんの声が震えている様にも聞こえる。 
 
そしてシーンは終わった。 
2人が楽屋に戻ってくる。 
口元が何となくニヤケている航介と、顔が何となくゲッソリしている宏樹さん。 
宏樹「多舞さんっっ!!」 
多舞「ん?…」 
まだマジック片手に微妙な笑い顔の多舞さん。 
宏樹「無理だよ〜、我慢出来なかった〜(悔)」 
多舞「何何?どぉしたの?」 
宏樹「アナタしかいないでしょ!こんな事するの!」 
背中を向ける航介の洋服をバッと捲る宏樹さん。 
……ん? 
書いてある。 
航介の背中には…マジックで、それはもぉ堂々と大きな文字で……。 
 
【おなか】 
 
『説明しよう。【おなか】とは… 
多舞タカシの愛のこもったイタズラで、 
お客さんの方を向いている航介の背中を唯一見る人間舘田宏樹を、 
舘田宏樹ただ一人を笑わす為に、本番中の楽屋でコソコソ仕込んだ、どーしようもない(しかも意外に手間のかかる)行為の事である。』 
 
宏樹「あ〜笑っちまったよ、後ろ向いたから気付かれてないと思うけど。」
         
        思い出し笑いを噛み締めながら、宏樹さんは悔しがる。 
そんな宏樹さんを見て、多舞さんは謝る。 
多舞「ごめんごめん。でもクオリティ高かったっしょ?」 
全然反省していない。宏樹「面白かったよっっ!」 
もはや怒っているのか泣いているのか笑っているのか、訳のわからない宏樹さん。 
 
と言うのも、この2人 
実は9年前のふれる〜じゅ初演時からの仲なのだ。 
しょっちゅう、この様なコミュニケーションがなされている。 
もはや2人の間では、愛を込めた挨拶程度なモノだ。 
 
あぁ恐ろしや。 
大人って恐ろしや。 
不意打ちのイタズラ。 
スリリングなギャンブル。 
補足だが、多舞さんと宏樹さん、そしてウチの演出蒲生淳は3人で一昨年、限定ユニットをつくっていた。 
そのユニット名は「鉄火場(ギャンブルステージ)」だ。 
うなずける。 
そのままだ。 
 
 
こぉやって大人達は、疲れてきた身体にムチをうち、緊張感を保って舞台に挑む。 
そして舞台上は、いつも新鮮な空気で、メリハリのある演技が繰り広げられる。 
舞台上では… 
 
多舞さんはきっと、いつまでも子供の様に、はしゃぎながらイタズラを続けるのだろう。 
そして宏樹さんは、戻って来た楽屋で悔しがりながら、思い出し笑いをしてしまうのだろう。 
あぁなんて愛らしい大人達。 
(-_-) 
…あ!もちろんこぉいった役者同士のネタで、作品が壊れる様な事はありませんので、ご安心あれm(_)m 
……ね?ナイよね? 
 
 
舞台の後半、多舞さんに渡される小道具のファイルには、もちろん宏樹さんからの愛の仕返しが入れられていた事は、紛れもない事実である。                 |